SATRI-IC アプリケーション設計ガイド
 

1.信号入力部
 

SATRI-ICの信号入力部は、一般の増幅器がハイインピーダンスの電圧入力であるのに比べて、ローインピーダンスで電流入力です。
ですから、一般の増幅器に比べるとまったく逆の性格を持っています。

 

信号の入力は次の2つの場合が考えられます。

 

 1. 電流信号

 2. 電圧信号

 

SATRI-ICは電流入力となっていますので、電流信号源は簡単に接続することができます。

電流信号源の例としては次のようなものがあります。

 

・電流出力型D/Aコンバータ・チップ

・フォトトランジスタ、ホール素子などの電流出力型センサー

・電磁検出器(コイルで磁界を検出するもの、たとえば、MCカートリッジなど)

・電流出力素子(たとえばSATRI-ICなど)
 



電流出力型D/Aコンバータとのインターフェイス

電流出力型D/Aコンバータのインターフェイスは図1のようになります。




D/Aコンバータは電流出力タイプを使います。接続はD/Aコンバータの電流出力から、SATRI-ICのINPUT(PIN14)へ、D/AコンバータのアナロググランドとSATRI-ICのGND(PIN13)を接続します。

 

フォトトランジスタとのインターフェイス


フォトトランジスタの出力は光量に比例した電流が得られますので、SATRI-ICの入力にフォトトランジスタを図2のように接続することができます。ただし、暗電流を打ち消す場合や、バイアス光を打ち消す場合は後に述べるオフセット打ち消し回路を挿入し、オフセット電流をキャンセルします。



MCカートリッジとのインターフェイス


MCカートリッジは出力電圧が1mV以下のものが多く、S/N比を大きくとる電圧増幅器を設計するのは難しいことでした。
MCカートリッジのようにインピーダンスが低く出力電流が大きい電磁変換器は、図3のようにSATRI-ICと組み合わせて、電流入力とすることで、S/N比が大きいイコライザを実現することができます。具体的な回路は後で示します。



この場合、MMカートリッジは出力電流が小さく、コイルのインダクタンスが大きいので使い物になりません。
MCカートリッジ以外でも磁気センサーや電流センサーなどコイルによる検出器と容易にインターフェイスすることができます。
 

電流出力素子とのインターフェイス


電流出力素子として、プラントなどで使うセンスアンプの出力など長距離の伝送が必要なところに多く使われています。
これは、長距離伝送に伴うリアクタンスの影響を小さく押さえられるからです。
オーディオにおいてもSATRI-ICを使うことによりプリアンプとメインアンプ間の伝送など、音の劣化を最小限に押さえることができます。
これは、出力インピーダンスが高い電流出力によって、インダクタンスによる影響を補正できることと、入力インピーダンス0によりキャパシタンスによる影響を小さくできることによります。また、インピーダンスの不整合による反射もありません。 SATRI-ICによる電流伝送は図4のように、出力と入力を接続するだけで実現できます。



図4では、正相接続、図5では逆相接続を示します。




SATRI-IC同士の接続では、グランドが共通でない場合は、同軸ケーブルかツイストペアケーブルを使ってください。

 

電圧信号の入力


電圧信号を入力するには、SATRI-ICの入力が電流入力なので、何らかの方法で電圧を電流に変換する必要があります。
その変換の方法には、次の二つの方法が考えられます。

1. 入力抵抗を電圧電流変換抵抗としてそのまま使う。
2. バッファアンプを介して、電圧電流変換を行う。

1の方法は、特に50Ωや75Ω、600Ωなどの定インピーダンスの回路に向いています。
それらの回路では信号電流を十分に取ることができるからです。それを図6に示します。



 

SATRI-ICのPIN14の入力に、定インピーダンスの入力抵抗Rを接続すればいいのです。
例えば、600Ωの定インピーダンス回路では 0dBの信号を入れますと、1.29mAの電流に変換されますので、RLに10KΩをつければ12.9Vに増幅することができます。

 

また、定インピーダンス回路でなくても、送り出し側のインピーダンスが低く、負荷としての入力抵抗Rを低くできる場合もこの方法で入力することができます。もう一つのバッファアンプを使う方法は、入力抵抗Rを低くできない場合や、信号電流が取れない場合に有効な方法です。




図7のようにバッファアンプを介して、SATRI-ICの入力抵抗Rに接続する方法です。
この方法では入力抵抗Rinを自由に設定でき、また、 SATRI-ICの入力抵抗Rもバッファアンプの能力に応じて設定することができます。
この方法では信号電流は入力抵抗Rを低くすることによって大きくすることができますので、S/NのSを大きくすることが出来、大きなS/N比を実現することができます。ただし、バッファアンプのノイズはRL/Rによって増幅されますので、バッファアンプにはノイズの少ないものを使用することが必要です。

  




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